「お茶漬け」は、気軽に食べられる家庭料理のひとつといえるのではないでしょうか。
とはいえ、緑茶以外のものをご飯にかけても「お茶漬け」といいますよね?他には何をかけていて、いつ頃から食べられるようになったものなのでしょうか。
冷めたご飯が温かく柔らかく食べやすくなり、ご飯にかけるものやのせる食材によって多様にアレンジ可能、自宅にあるもので簡単に仕立てたものからお店のメニューになるまで振り幅の大きさや自由度も魅力といえます。ふと食べたくなる時、ありませんか?
そのような「お茶漬け」について、改めて調べてみました。
お茶漬けの始まりや歴史と意味
お茶漬けの意味する範囲
お茶漬けとは、ご飯の上にお茶や出汁、またはお湯をかけて食べる料理のことを指します。
一般的に「お茶」と言えば緑茶を思い浮かべますが、お茶漬けに使われる液体は多種多様で、お茶以外をかけた場合にも広義の意味として「お茶漬け」と呼ばれるものに含まれるということになります。
水やお湯をかけたのが始まり
お茶漬けの原型は、奈良時代や平安時代にまで遡ると言われています。
当時は炊いたご飯に水やお湯をかけて食べる「湯漬け」と呼ばれる食べ方があり、柔らかくなって消化によく、簡単に食べられることから庶民の間でも広まりました。
出汁をかける地域性
地域によっては、古くから昆布や鰹節の出汁をかける文化が根付いています。
特に関西地方では出汁茶漬けが一般的で、上品な風味を楽しむことができます。また、北陸地方や東北地方などでも、古くから出汁をかけたお茶漬けが食べられており、地域ごとに特色のある味わいがあります。
例えば、北陸では昆布や甘めの鰹出汁がよく使われ、東北地方では焼き魚をほぐして加えることが多いなど、それぞれの地域の食文化に根ざしたアレンジが見られます。
江戸時代の人気
江戸時代の特に後期には、緑茶(おもに煎茶)が広く普及し手に入りやすくなったことで、庶民の間でもお茶漬けが親しまれるようになりました。
商業が発展し町人文化や外食が栄え、手軽でおいしい夜食や簡単な食事「ファストフード」として広まっていったそうです。
インスタント茶漬けの素の発明と種類
昭和時代に入ると、インスタントのお茶漬けの素が開発され、現代のお茶漬け文化が確立されました。具材や味のバリエーションも豊富になり、より手軽に楽しめるようになりました。
さらに、フリーズドライなどの技術により最中タイプや高級食材を使用したタイプなど、幅広く展開を続けています。
お茶漬けの緑茶いろいろ
ひとことで緑茶と表した中にも、実はさまざまな種類に分類されています。どのお茶をかけてもおいしいものですが、せっかくですのでお茶の種類に合わせた食材の組み合わせを楽しんでみてはいかがでしょうか?
以下に代表的な緑茶の種類(煎茶・番茶・ほうじ茶・抹茶・玉露)別に、あくまでも一例をお伝えしております。※他にも粉茶・茎茶・玄米茶などがあります。
煎茶・番茶には
「煎茶」はお茶の7割を占めるもので、爽やかな香りとほどよい渋みが特徴です。鮭や梅干しなど、ご家庭にある定番のさっぱりとした具材との相性が良い傾向にあります。
「番茶」は煎茶のうち二番茶や三番茶および固い葉を用いたやや廉価で普段使いにぴったりのお茶で、塩昆布や漬物などを含め煎茶同様に和の食材とよく合います。
ほうじ茶もあう
「ほうじ茶」は茶葉を炒り上げた褐色のお茶で、香ばしい香りと色味から脂の多い焼き魚や豚肉などとも相性がよく、脂っこさを和らげるとともにスープのような味わいになります。
抹茶で手軽に
「抹茶」は日光を遮る「被覆栽培」の茶葉を揉まずに乾燥させ粉末にしたお茶で、少量でも美しい緑色と上品で独特の旨味が楽しめます。
使い道が難しそうで敬遠されがちかもしれませんが、実は粉末であるため、ご飯と食材に直接のせてお湯をかけるだけで手軽に濃い緑茶色と風味、うま味のあるお茶漬けを手軽にいただくことができて、用意しておくと便利ですよ。
合わせる食材は、ありあわせのものでOKですし、抹茶だけをかけていただいてもおいしいものです。
市販のインスタント茶漬けの素には、顆粒状の抹茶などが含まれている商品が多く、お湯をかけるだけで簡単に楽しめます。
玉露で高級アレンジも
「玉露」は日光を遮る「被覆栽培」によるお茶で渋みが減りアミノ酸などのうまみが凝縮されています。
甘みを感じるまろやかな旨味とコクが立ち、煎茶のような個性よりも出汁のように用いることができるため、イクラ・ウニ・キャビア・鯛などの高級食材ともマッチします。
出汁茶漬けの味わい
使う出汁の種類は?
出汁茶漬けに使われる出汁には、昆布、鰹、椎茸などのほか鯖やあご、野菜、鶏豚牛、その他魚介類など、どのような出汁も用いることが可能です。
普段のお料理に用いる食材の組み合わせで選ぶと、相性もよくなります。
また顆粒だしは手軽で便利に、素材から出汁をとれば風味が立ち、いづれの場合もおいしくいただけます。
出汁茶漬けの食材は
出汁をかけるお茶漬けの定番といえば、以下のようなものなどが思い浮かぶのではないでしょうか。
- 鯛茶漬け
- ひつまぶしのうなぎにかける
- 大徳寺納豆の出汁茶漬け
- 鶏ガラスープをかけた鶏飯 等々
※大徳寺納豆は寺院で作られた黒くて塩味とコクの深い味噌のような大豆発酵食品です。
その他、お茶をかける場合とほぼ同じ和食材は、もちろん合います。
なかでも、だし巻き卵があるように卵焼きや目玉焼きをのせた出汁茶漬けや、焼きおにぎりにかけた相性の良さはおすすめいたします。
他に何かける?海外では
海外ではお茶漬けとは呼ばれませんが、例えば、韓国ではコムタンスープを使ったもの、中国では薬膳スープをかけたご飯、台湾風豆乳スープをご飯にかけたものなど様々なメニューがあります。
湯漬けの魅力
湯漬けはシンプルながらも素材の味が引き立ち、最も簡単に食べられて満足感も得られるのが魅力です。
冷めたご飯を温かく柔らかく食べやすくなることから、煮込まないお粥や雑炊・リゾットに近いジャンルと捉えることもでき、佃煮や漬物、焼き魚、塩昆布など塩味を含む食材や、ショウガの甘酢漬けやキムチ、少しとろけたチーズなどもよく合います。
具材選びについて
日常的にその時ご家庭にあるものを用いることで、手軽においしくいただけるのが、お茶漬けのよいところです。
具材は一種類とは限らず、組み合わせることも可能です。
ご飯は炊きたても、冷めたご飯も、また水でお米の粘りを洗っても洗わなくても、各ご家庭のやり方でお好みのお茶漬けを楽しんでくださいね。
一般的な具材とその役割
- 海苔やあられ:風味と香ばしさや食感のアクセントが加わる
- 佃煮:濃い目の味付けと昆布や小魚そのもののうまみが加わる
- 漬物:塩味やシャキシャキとした食感が加わる
- 梅干し:酸味のさっぱりとした味わいで食欲がない時にも
- 鮭や鯛:魚の旨味が染み出し、贅沢な風味に
- わさびや三つ葉:爽やかな風味がプラスされ、奥深い味わいに
季節ごと旬の具材を取り入れる
食事に季節感を取り入れながらお茶漬けを楽しむ際の、ほんの一例です。
- 春:菜の花や桜えび、筍、アサリ、カツオなど
- 夏:ミョウガ、ワサビ、大葉、オクラ、千切り山芋などでさっぱりと
- 秋:きのこ類、焼きナス、秋刀魚など
- 冬:ブリ、牡蠣、カニ、カブなどで滋味深く
まとめ
「お茶漬け」は、歴史ある日本の食文化の一つであり、お茶(緑茶)以外に出汁やお湯をかけた場合も広義の意味として含まれる呼称で、自由度の高い多様ないただき方が可能です。
各ご家庭ならではの方法で、その時にある食材を用いて、あるいは季節により具材やかけるものの種類をさまざまに変えながら、手軽ながらも奥深い味わいの組み合わせを楽しみましょう。
お店で食べた味を再現してみるのも一興です。