私たちの日常に欠かせないものとして、「お茶」が挙げられるのではないでしょうか。
緑茶や烏龍茶、紅茶、ならびにハーブティーなど、多種多様な飲み物の名前に「茶」とありますが、それらの種類の違いはどのようなものなのか、知りたいと思いませんか?
「六大茶分類」からみるとわかりやすいと感じましたので、整理してみました。
「茶」の狭義の意味と種類の違い
「茶」の狭義の意味は、ツバキ科ツバキ属のチャノキ(茶の木)、学名Camellia sinensis(カメリア・シネンシス)という常緑樹の葉を原料にしてつくられた、緑茶や烏龍茶、紅茶など、さまざまな種類のお茶を指します。
「茶」の広義の意味には、「カメリア・シネンシス」以外の植物を使った飲み物で、「茶外茶」と呼ばれるそば茶、マテ茶、ルイボスティーなどを含みます。
ここでは、狭義の茶の木の茶葉を用いた「茶」について、緑茶・白茶・青茶(烏龍茶)・紅茶・黄茶・黒茶の「六大茶分類」とともに、製造方法の違いなどを中心にお伝えしていきます。
茶の種類が生まれる秘密「発酵」
茶葉を原料とするお茶は、同じ植物から作られるにもかかわらず、香りや味わいが大きく異なりますね。
その違いのカギを握るのが「発酵」と呼ばれる工程です。この発酵とは、茶葉に含まれる酵素が酸素と反応することで起こる酸化の過程のことで、「酸化発酵」ともいわれています。
酸化の程度や工程の違いによって、緑茶、紅茶、烏龍茶などの異なる種類のお茶が生まれます。
酸化が進むにつれ成分が変化し、茶葉の色は濃くなり、香りや味わいも大きく変化し、茶葉にそれぞれの個性を与えるというわけです。
摘み取られた茶葉は、そのまま放置すると自然に発酵が進みます。
・発酵を防ぐには、摘み取った直後に加熱処理などの工程を行います。
これにより「不発酵茶」として緑茶が生まれます。
・意図的に発酵を促すには、茶葉を日光に晒したり、揉んで表面に傷をつけます。
発酵を途中まで進めたところで止めた「半発酵茶」として主に烏龍茶が生まれます。
完全に酸化発酵させると「完全発酵茶」として紅茶が生まれます。
他にも「微発酵茶」や「後発酵茶」といった製法があります。詳しくは次の章でお伝えいたします。
- 一般的に「発酵」と言えば、食品に微生物が働きかけることで成分が変化する現象を指します。例えば、大豆を麹菌や酵母で発酵させると醤油に、納豆菌で発酵させると納豆に、牛乳を乳酸菌で発酵させればヨーグルトやチーズに変わります。
- 茶における「発酵」は、微生物の働きではなく、茶葉そのものに含まれる酵素による酸化作用を指します(※「黒茶」はさらに麹菌による発酵も行います)。
六大茶分類とは
茶の基本的な分類法
お茶は、茶葉をもとに製法や発酵の度合いにより、緑茶・白茶・青茶(烏龍茶)・紅茶・黄茶・黒茶の「六大茶類」に分類されます。
この分類方法は、1978年に中国の安徽(あんき)農業大学教授によって提唱され、中国茶だけでなく、世界中で茶の基本的な分類として広く認知され用いられているものです(近年では、花茶などの「茶外茶」を加えた七つの分類が一般的とされていますが、今回は除外しています)。
分類上のさまざまな製造工程
お茶の製造には、以下の工程が挙げられ、それぞれの製法により個性豊かな6種のお茶となります。
- 茶摘(ちゃつみ): 茶の新芽を摘む
- 萎凋(いちょう): 摘んだ茶葉を日にさらしてしおらせ、軽い発酵で香りを発たせる
- 揺青(ようせい): 茶葉を軽く揺すり、細かい傷をつけ緩やかな半発酵と香りを促す(烏龍茶のみ)
- 炒青(しょうせい)/殺青(さっせい):茶葉を高温の釜で炒り、酸化酵素の働きを止める
- 揉捻(じゅうねん): 茶葉を揉み込み組織細胞を破壊して発酵を促し、形を整える
- 麹菌など微生物による発酵: 黒茶のみ
- 悶黄(もんおう): 茶葉の熱と水分で数時間蒸らし、葉緑素を分解してまろやかにする(黄茶のみ)
- 乾燥(かんそう):茶葉を乾燥させる
それでは、各茶について順番に発酵の度合い、製造工程や特徴をお示ししていきます。
緑茶りょくちゃ
「不発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 蒸し→ 揉捻→ 乾燥
茶葉や抽出した茶の色(水色すいしょく)が緑色であることから名づけられました。
茶葉を摘み取った後、すぐに加熱して酸化を防ぐことにより、日本の蒸し製法では、爽やかな香りを持ち、中国で一般的な釜炒り製法では、独特の香ばしい風味を生み出します。
白茶しろちゃ
「微発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 萎凋→ 乾燥
白茶の名前は、新芽を覆う産毛が銀白色に輝く様子に由来しています。発酵を軽く抑えることで作られる希少なお茶で、繊細で優雅な味わいが特徴です。
青茶あおちゃ(烏龍茶ウーロン茶)
「半発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 萎凋→ 揺青→ 炒青→ 揉捻→ 乾燥
日本でよく知られている烏龍茶は、じっくり発酵を行うとともに途中で加熱処理によって抑えるため、製造に多くの時間と手間がかかるお茶です。その発酵度は20%から80%と幅広く、銘柄によって風味が大きく異なるのが特徴です。
茶葉や抽出した茶の色は緑茶と紅茶の中間とされています。
紅茶こうちゃ
「完全発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 萎凋→ 揉捻→ 発酵→ 乾燥
紅茶は、世界で最も生産量が多い茶葉で、多くの国々で日常的に飲まれています。
完全に酸化させることで、深い香りとコクのある味わいを生み出します。葉の色は茶褐色になり、紅茶特有の風味が際立ちます。
黄茶きちゃ
「微発酵+後発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 殺青→ 揉捻→ 悶黄→ 乾燥
黄茶は、緑茶の製造過程で偶然に発見されたとされる珍しいお茶で、黄色みがかった茶葉が特徴です。現在は生産者の減少により非常に希少なお茶となっています。
黒茶くろちゃ
「後発酵茶」
【製造工程】茶摘→ 殺青→ 揉捻→ 麹菌など微生物発酵→ 乾燥
黒茶は、微生物発酵を利用しており、保存期間が長くなるほど発酵が進んで濃い色合いとなり、風味も熟成するのが特徴です。
特に普洱茶(プーアルちゃ)が有名で、年数を経たヴィンテージ品は高値で取引されることもあります。その独特の味わいは好みが分かれますが、一度好きになると虜になる人も少なくありません。
まとめ
「茶」の狭義の意味は、ツバキ科ツバキ属のチャノキ(茶の木)、学名Camellia sinensis(カメリア・シネンシス)という常緑樹の葉を原料としたお茶です。
茶の木からさまざまな茶の種類が生まれる秘密は、茶葉に含まれる酵素が酸素と反応して生じる酸化過程を表す「酸化発酵」と呼ばれるものです。
この酸化発酵の程度や製造工程の違いにより緑茶、紅茶、烏龍茶など異なる6種類のお茶となります。
1978年中国の安徽(あんき)農業大学教授により提唱された「六大茶分類」は、世界中で茶の基本的な分類として広く認知され用いられており、具体的には緑茶・白茶・青茶(烏龍茶)・紅茶・黄茶・黒茶と分けられています。
そして、お茶の味わいや香りに個性を与えるものは発酵だけではありません。
茶葉の品種や栽培された土地の気候や製法など、各地で培われた伝統や文化・技術によって、それぞれ個性的な魅力を持つものとなっているのではないでしょうか。
このような背景を知ることで、日常的にいただく一杯のお茶に、特別なひとときを感じられるかもしれませんね。