なぜお正月飾りには橙?みかんとの違いや日本文化とのつながり・用い方

暮らし

お正月飾りの鏡餅にのる「橙(だいだい)」と、冬におなじみの「みかん」。

見た目は似ていますが、分類上や味、用い方には大きな違いがあります。

とくに橙は古くから縁起物として親しまれ、お正月飾りなど日本文化と深く結びついてきました。

両者の違いや見分け方、歴史や旬・楽しみ方を知っておくことで、年末年始の飾りつけや食卓で話題が広がるきっかけになるよう、まとめたことをご紹介しております。

橙とみかんの違い簡略比較

まずは、両者の違いを簡単な比較表でまとめましたのでご覧ください。

橙もみかんも同じく、柑橘類の総称を表す「ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属」に属し、その内の分類でオレンジ類とミカン類に分かれます

橙(だいだい) みかん(温州みかん)
分類 ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・オレンジ類ビター(酸味・苦味を活かす柑橘) ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・ミカン類(甘みが主役の柑橘)
果実の大きさ 中〜大玉(直径約7〜9cm) 小〜中玉(直径約5〜7cm)
味の特徴 酸味が強く、香りにほのかな苦み 甘みが強く、酸味は控えめ
用途 調味料(ポン酢・マーマレード)、香りづけ 生食、デザート、加工品
果皮 厚くやや硬め 薄くやわらかい
縁起との関係 「代々」に通じ正月飾りに多く用いられる 柑橘類としての一般的な縁起の良さ「吉」につながる
収穫時期 冬〜翌春 晩秋〜冬

それでは、以下の章で詳しくみていきましょう。

橙(だいだい)とは?日本文化と深く結びついた果物

橙とは?分類・原産・特徴

「橙・ダイダイ(学名: Citrus aurantium)」は、ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・オレンジ類ビターの一種です。

オレンジ類の中でもスイートオレンジとは異なり、同じ品種としてはビターオレンジやサワーオレンジなどが代表的です。

橙はインド北部から東南アジアにかけてが原産とされ、中国を経由して日本へ伝わったと考えられています。

果皮は厚く、色は鮮やかな橙色で、果汁は酸味が強く、生食よりも調味料や、苦味も含んだ奥行から香りづけとして使われることが多いのが特徴です。

橙と日本の縁起:お正月飾りと「代々」続く家

橙は、その名が「代々(だいだい)」に通じることから、古くから家が長く続く象徴とされてきました。

特にお正月の鏡餅の上に飾られる橙は、家族や子孫が続いていくことを願う縁起物として欠かせない存在となっています。この習慣は室町時代にはすでに広まっていたとされ、武家や公家の正月飾りにも橙が使われていました。

また、橙の特徴として、実が熟してもすぐには落果せず木に残り、翌年まで枝に残ることがあります。この様子が「代々実をつける」姿に重ねられ、縁起の良さが一層広まりました。

さらに、冬に色づいた果実が春を越しても残る様子は、時の移ろいとともに続く生命力の象徴としても愛されました。

農村部では、正月が過ぎても木に残った橙をそのまま観賞し、一年の豊作や家内の円満を願う風習も伝えられています。

橙色と名前の由来とインド伝来

やがて正月飾りの風習に組み込まれるようになりました。

「橙色」という色名は、この果実の鮮やかな色合いから名づけられました。

橙はインド北部から東南アジアにかけてが原産とされ、中国を経由して日本へ伝わったと考えられています。

文献によれば、奈良から平安時代には渡来し、当初は庭木として植えられるほか、薬用や香りづけとしても珍重されていました。また、宮廷文化の中で観賞用としての価値が高まり、鮮やかな果皮の色は染色や文様のモチーフにも用いられました。

やがて室町から江戸時代には、正月飾りのほか祝儀の場での飾り物としての役割が定着し、橙色という色名も広く知られるようになり、日本の伝統色のひとつとして、晴れやかさや温かみを表す色彩として現代まで受け継がれています。

橙・みかん・オレンジの違いは?

みかんとは?温州みかん・品種の特徴と由来

みかんは、日本でもっとも親しまれている柑橘の一つで、正式には「温州みかん(学名 Citrus unshiu)」が代表品種です。

(みかん自体の原産地は、インド北部アッサム地方周辺といわれています。)

名称は交易のあった中国の地名「温州」に由来しますが、品種そのものは江戸時代に現在の鹿児島県長島町で持ち帰った苗木から自然発生したもので、日本発祥だそうです。

温州みかんは果皮が薄く、手で簡単にむけるのが魅力で、甘みが強く酸味は穏やかで、冬の間の生食用として親しまれています。

品種改良や栽培技術の向上により、地域ごとに味わいや旬が異なる多様な品種が生まれています。

オレンジの由来や歴史・特徴

一般的にオレンジと呼ばれているスイートオレンジ(学名 Citrus × sinensis)は、ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属オレンジ類に分類され、ポメロとミカンの交配によって誕生したとされる柑橘類です。

代表的な品種には、ジューシーさが魅力のバレンシアオレンジ、香り高いネーブルオレンジ、鮮やかな果肉色のブラッドオレンジなどがあります。

原産地は、中国~インドおよび東南アジアにかけての地域とされ、このエリアは柑橘類全体の起源地のひとつと考えられています。その後、歴史の中で地中海沿岸やアメリカ大陸にも広がり、多様な品種が栽培されてきました。

オレンジは甘みと酸味のバランスに優れ、果汁が豊富で、生食はもちろん、ジュースやジャム、焼き菓子など幅広い料理に使われます。

橙・みかん・オレンジ種の違い比較表いろいろ

 

それぞれの見分け方に便利な特徴を、一覧にまとめました

橙(だいだい) みかん(温州みかんなど) オレンジ(バレンシア・ネーブルなど)
分類 ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・オレンジ類ビター ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・ミカン類 ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・オレンジ類スイート
原産地 インド〜東南アジア インド北部、温州みかんは中国経由で日本の鹿児島 中国~インド~東南アジア、その後おもに地中海沿岸や米国へ
果実の大きさ 中〜大玉(直径7〜9cm程度) 小〜中玉(直径5〜7cm程度) 中〜大玉(直径7〜10cm程度)
果皮 厚くやや硬め、表面はやや粗い 薄くやわらかく、手で簡単にむける やや厚く硬め、ツヤがあり香りが強い
果肉・味 房がしっかりして酸味強め 房が柔らかく甘み中心 房がしっかり、甘味酸味とも中等度、果汁多め
香り 深みのある酸味香、やや苦味を含む 柔らかく甘い香り 爽やかで華やかな香り
特徴的な性質 酸味が強く、熟しても木に長く残る。回青現象あり 甘みが強く、皮が薄くむきやすい 甘酸バランスが良く、果汁が豊富
主な収穫時期 冬〜翌春 晩秋〜冬 種類により初夏〜秋
主な産地(日本) 和歌山県・静岡県など 和歌山県・愛媛県・静岡県など 一部温暖地域(小規模)、輸入品が主流

適した用途の特徴

いずれも、お料理やデザート、調味料など幅広く用いることができます。

  • :香酸柑橘、酸味強め、調味料や香りづけに活用
  • みかん:甘み強め、生食向き、日本独自の栽培品種多数
  • オレンジ:輸入品が多いが国産もあり、甘酸バランス型、生食・ジュース兼用

収穫時期や栽培環境の違い

近年はハウス栽培やさまざまな品種により、通年店頭で見かけるほどになりましたね。

  • :冬~翌春、温暖地域で栽培
  • みかん:晩秋~冬、日当たりの良い斜面が好まれる
  • オレンジ:種類によって初夏~秋

橙・みかんが縁起物とされる理由

正月飾りで鏡餅の上に橙をのせる意味

鏡餅の上に飾られる橙は、家族や子孫が続いていくことを願うものです。

その理由は名前の響きが「代々(だいだい)」と通じ、「世代を超えて続く」という意味合いが込められているためです。

平安時代や室町時代の記録にも、橙が正月の供物として用いられていたことが記されており、すでに長い歴史があります。

また、古来より柑橘類はその鮮やかな色や香りから、邪気を祓い福を招く果物と考えられてきました。中国の故事では、柑橘の「橘(きつ)」が「吉」に通じるとされ、日本でもその考えが伝わり、祝いの場に柑橘を用いる風習が広まりました。

橙はその中でも特に象徴性が強く、正月飾りの定番として受け継がれています。

代々続く(回青橙)と縁起にまつわる風習

橙には「回青(かいせい)」と呼ばれる性質があり、橙色に熟した果実が再び青(緑色)になることがあります。

この現象は珍しいだけでなく、「再び巡る」「若返る」などの意味につながる縁起の良い兆しとして喜ばれてきました。

この性質と、実が翌年まで枝に残る特性が組み合わさり、「代々続く家運」を象徴すると考えられてきました。

特に西日本の一部地域では、この回青橙を門松や床の間に飾り、一年を通して家を見守ってもらうという風習が残っています。

日本各地に伝わる風習やエピソード

地域によっては、橙は正月以外の祝い事にも使われます。

和歌山県や愛媛県の一部では、婚礼の飾り物に橙を添える風習があり、「新しい家族が代々続くように」という願いが込められます。

また、静岡県の一部の農村では、豊作祈願の神事で橙を神棚に供える習慣があり、収穫後も木に残った実を「授かり物」として春までそのままにしておくことがあります。

古典文学にも橙が登場し、『本朝食鑑』(1697年)や『和漢三才図会』(1712年)には橙の形状や香りの記述が見られ、当時からその価値が認識されていたことがわかります。

みかん、オレンジが正月飾りに選ばれない理由

みかんやオレンジは橙に比べると果実が木に長く残らず、収穫に適した時期を過ぎると落果してしまうため、「代々残る」象徴性を持ちにくいとされます。

そのため、正月飾りには縁起性の高い橙が選ばれてきました。

正月文化と柑橘類全般の縁起

柑橘類は香りの良さや鮮やかな色が祝い事に好まれ、橙はその代表格として古来から位置づけられています。

日本の正月飾りにおいて柑橘類が重宝される背景には、中国から伝わった「柑橘=吉祥果」という考え方があります。柑橘の香りは邪気を遠ざけるとされ、鮮やかな色合いは太陽を象徴するとされました。

この考え方はやがて日本の風土や行事と結びつき、橙をはじめとする柑橘が正月飾りや祝い事の場に定着しました。現代でも、橙の明るい色と丸い形は「円満」「未来」を連想させ、文化的な意味を持つ飾り物として受け継がれています。

橙とみかんの楽しみ方・食べ方

橙とみかんの選び方・保存のポイント

選び方

  • :皮がやや厚く、ヘタがしっかりしている
  • みかん:皮が薄く、持ったときに軽やか

保存時のポイント

  • 橙の保存ポイント                                  日当たりを避け、風通しのよい涼しい場所に常温保存、新聞紙や紙袋に1つずつ包み乾燥を防ぐ、昔ながらの方法は紐で吊るして接地面をなくす
  • みかんの保存ポイント                                     風通しのよく段ボールから出して重なりを避け、ざるなどで湿気を逃がし柔らかくなったものから食べる

橙の精油や香りを楽しむアロマ

橙の果皮や種から抽出される精油は、柑橘特有の爽やかさに加え、橙特有のほろ苦さを伴う奥行きある香りが特徴です。

アロマストーンやアロマディフューザーなどで香りを広げたり、ポプリやサシェに含ませて衣類や部屋の香り付けに用いることができます。

橙の代表的な食べ方

酸味を活かして、魚料理や鍋料理の調味に使われます。果汁や果皮のすりおろしは、仕上げにかけると香りと味わいが引き立つほか、ポン酢の材料に用いる場合もあります。

果皮はマーマレードや砂糖漬けに加工でき、ピールは紅茶やお菓子作りにも向いています。

橙ポン酢(材料・分量・作り方)

すっきりとした酸味と香りが、鍋料理や冷奴によく合いますよ。

材料(約200ml分)

  • 橙果汁…100ml
  • 醤油…80ml
  • みりん…20ml
  • かつお節…ひとつかみ
  • 昆布…5cm角1枚

作り方

  1. 小鍋にみりんを入れて軽く煮切り、火を止める
  2. 醤油、橙果汁、昆布、かつお節を加える
  3. 蓋をして冷蔵庫で半日ほど置き、昆布とかつお節を取り除く

橙マーマレード(砂糖控えめ・材料・分量・作り方)

皮のゆで時間を長めにすると苦味がやわらぎ、砂糖控えめでも食べやすくなります。トーストはもちろん、ヨーグルトや紅茶に入れてもよく合いますよ。

材料(出来上がり約400g)

  • 橙…2個(正味約400g、果汁と果皮を使用)
  • 砂糖…果肉と果皮の合計重量の40〜50%(160〜200g)
  • 水…300ml

作り方

  1. 橙をよく洗い、皮を薄くむく。白い部分(アルベド)は苦味が強いので、半量程度を削ぎ取る
  2. 皮を細切りにし、たっぷりの水に30分ほど浸してアクを抜く
  3. 果肉は房ごとに分け、種があれば取り除いて果汁は別に絞っておく
  4. 鍋に皮と水を入れて中火で15分ほど下ゆでし、ざるにあげる
  5. 鍋に下ゆでした皮、果肉、果汁、砂糖を入れ、弱〜中火で煮る
  6. アクを取りながら30〜40分煮詰め、とろみがついたら火を止める
  7. 熱いうちに煮沸消毒した瓶などに詰め、粗熱を取る

みかんの食べ方と料理活用法

そのまま食べるほか、ゼリーやシャーベット、サラダにも向いています。

みかんはそのまま食べるほか、果汁を絞ってジュースやドレッシングにしたり、果肉をサラダやデザートに加えるなど用途が広い果物です。

加熱すると甘みが凝縮し、焼き菓子やコンポートにも向くほか、みかん鍋などお料理にも用いるなど新しい食べ方も次々創造されています。

冷凍すればシャーベット感覚で楽しめる「冷凍ミカン」も有名ですね。

レンジでみかん牛乳かん(材料・分量・作り方)

給食やご家庭で定番デザートも、電子レンジならより簡単に作れます。

材料(4人分)

  • 牛乳…400ml
  • みかん果肉…適量
  • 粉寒天…4g
  • 砂糖…50g

作り方

  1. 耐熱ボウルに牛乳、粉寒天、砂糖を入れ、よく混ぜる
  2. ラップをせず電子レンジ(600W)で3分加熱し、ダマが残らないようよく混ぜる
  3. 容器に流し入れ、みかん果肉を加えて冷蔵庫で冷やし固める

まとめ

橙はその名から連想される「代々」と、回青および熟した後も木にとどまる性質から「代々続く」縁起物として鏡餅の上などに飾る歴史と、ビター系オレンジ類の個性を持った柑橘類です。

みかんは同じ柑橘類のミカン類で、代表的な温州みかんは長崎県発祥の甘みと食べやすさで広く親しまれている柑橘類です。

また、柑橘類自体が橘=吉につながり、柑橘の香りは邪気を遠ざけるとされ、鮮やかな色合いから陽、明るい色味と丸い形状から円満など縁起物とされてきました。

今も受け継がれる象徴的な意味とともに、両者の違いを簡単にまとめた比較表を以下に再掲いたします。

正月飾り以外にも、それぞれの特徴を活かしたお料理や香りなどを思い浮かべながら、店頭に並ぶのが楽しみに待ちたいものですね。

橙(だいだい) みかん(温州みかん)
分類 ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・オレンジ類ビター(酸味・苦味を活かす柑橘) ミカン科ミカン亜科ミカン連カンキツ属・ミカン類(甘みが主役の柑橘)
果実の大きさ 中〜大玉(直径約7〜9cm) 小〜中玉(直径約5〜7cm)
味の特徴 酸味が強く、香りにほのかな苦み 甘みが強く、酸味は控えめ
用途 調味料(ポン酢・マーマレード)、香りづけ 生食、デザート、加工品
果皮 厚くやや硬め 薄くやわらかい
縁起との関係 「代々」に通じ正月飾りに多く用いられる 柑橘類としての一般的な縁起の良さ「吉」につながる
収穫時期 冬〜翌春 晩秋〜冬

 

 

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