朝食のパンに塗ったり、デザートのトッピングに使ったりと、私たちの食卓に身近な「ジャム」や「コンポート」類は、いずれもフルーツを使った甘い保存食ですが、その違いをご存じでしょうか?
この記事では、それぞれの特徴や使い方、保存方法、手作りレシピやアレンジについてご紹介しております。
フルーツのおいしさを引き出すヒントや、旬のものを無駄なく楽しむアイデアとしてご覧いただき、毎日の食卓に彩りを添えてみませんか?
フルーツのジャム・コンポート類の違いは
ジャムとコンポート類の違い
ジャムとコンポートは、どちらも果物を甘く煮て作る保存食ですが、作り方と仕上がりが異なります。
ジャム
ジャムは、フルーツなどを砂糖類と一緒にゼリー化するまで煮詰めたもので、ペクチンという成分により固まります。また日本では市販品は、糖度40%以上のものと規定されています。
英語の“jam” の「押しつぶす」「詰める」に由来し、フルーツなどを煮詰めて詰めた食品を指します。
パンに塗ったりお菓子作りにも使いやすい濃厚な味わいになり、保存もききます。
コンポート
コンポートは、フルーツをシロップ類で軽く煮て、元の形や食感を残すのが特徴です。素材そのものの風味やみずみずしさを活かすため、煮詰めすぎないのがポイントになります。
フランス語の “compote”「煮る」に由来し、英語では果物のシロップ煮や盛り皿を指します。
そのまま、もしくはお菓子やヨーグルトなどに添えて見た目にも華やかさが加わります。保存よりは調理して早めに楽しむデザート向けといえます。
中間的な存在のコンフィチュール
コンフィチュールは、フランス語の“confiture”「保存食」の意味をもち、フルーツを他の食材や香辛料・シロップ類などで煮込んだものです。日本ではジャムよりもややゆるめに仕上げたものを指すことが多く、ジャムとコンポートの中間のような存在として認識されることもあります。
フルーツの形をほどよく残しながらも、甘さやとろみと保存性もあるため、作り手の個性や見た目にも美しいギフト物としても人気があります。
それぞれの保存期間
- ジャムは砂糖の濃度が高いため保存性に優れており、密閉保存で冷蔵1ヶ月、未開封なら常温保存で数ヶ月~1年ほど保つことができます。
- コンポートは水分が多く、冷蔵保存で4~5日程度が目安です。冷凍も可能ですが、解凍後の食感が変わることもあります。
- コンフィチュールも冷蔵・冷凍保存で比較的長持ちしますが、開封後は早めに使い切るのが基本です。
保存容器は十分煮沸消毒した上で密閉し、開封後はなるべく早めに使い切りましょう。
旬のフルーツの活かし方
旬のフルーツは、果実が充実し新鮮で風味もよく価格で手に入るのが魅力です。
なかでも、大量に手に入った時や不揃いの大きさや形状・糖度不足などの場合には、ひと手間加えてジャムやコンポート類に加工することで、おいしく少しでも長く楽しむことができる点が魅力です。
それぞれ季節ごとに旬のフルーツを用いることで、バラエティ豊かに通年ジャムやコンポートを楽しめるばかりか、自分好みに手作りする工程も、季節感を感じる豊かな時間をもたらしてくれることでしょう。
例えば、春:いちごや柑橘類、夏:ブルーベリーや桃、秋:りんごや洋梨、冬:柚子やキウイ など
また、どのようなフルーツでも概ねジャムやコンポート類に仕立てることが可能で、家庭菜園で収穫したものや変わり種も、チャレンジするとなかなか楽しいものです。
ジャムの基本と作り方
ジャムの基本
フルーツと砂糖の割合
フルーツに対して砂糖を40〜60%程度加えるのが一般的です。
特に昔ながらのジャムで保存性も高めたい場合は、基本のフルーツ:砂糖 = 1:1(50%)が作りやすい分量になります。
保存性を高めたい場合は砂糖を多めに、お好みで甘さを控えたい場合は保存性が下がる点に留意しながら、フルーツ:砂糖 = 2:1(30〜40%)などに砂糖を減らすことも可能です。
レモン汁
レモン汁を加えることで、ジャム作りがうまくいきます。
- 甘さにキレが出て味が引き締まる
- 酸の力でペクチンの働き助け、ゼリー化してとろみが安定しやすくなる
バリエーションとその特徴
ジャムには、フルーツの種類のほか、形を残したプリザーブタイプやペーストタイプなどの形状、砂糖やはちみつ入りなど甘味材料の種類や糖度の違い(甘さ控えめなど)によりさまざまな種類があります。
例えば、ペーストタイプは滑らかさを、プリザーブタイプは食感を、糖度を控えめにしてスイーツや料理などに、それぞれの特徴を活かして用いることで、手軽に楽しさも広がります。
また、手作りするとさらにさまざまな材料や形状で日常の食卓に取り入れやすくなります。
保存方法と期間
煮沸消毒した瓶に詰めて密閉し、冷暗所で保存します。未開封なら常温で数ヶ月〜1年保存可能ですが、開封後は冷蔵庫に入れて2週間以内を目安に使い切りましょう。
いちごジャムの作り方
一般的な食べやすく作りやすい少量で、鍋・電子レンジによる方法をご案内いたします。
材料(約200ml分)
- いちご:200g
- お好みの砂糖(グラニュー糖など):100g
- レモン汁:大さじ1
作り方
- 鍋で いちごを洗ってヘタを取り、砂糖と一緒に鍋に入れて30分~1時間ほど置きます。水分が出てきたら中火で加熱し、フツフツしてきたらレモン汁を入れ、アクを取りながら煮詰めて完成です。
- 電子レンジで いちごを洗ってヘタを取り、砂糖とレモン汁を一緒に大きめの耐熱ボールなどに入れて30分~1時間ほど置きます。水分が出てきたらラップをせずに、500Wのレンジで3分加熱、取り出してアクを取ります。さらに3分加熱を2回、途中取り出して混ぜます。お好みで煮詰める場合は、1~2分ずつ様子を見ながら加熱して完成です。
冷凍ミックスベリーのコンフィチュール風ジャム
冷凍フルーツと電子レンジで、コンフィチュール寄りの砂糖少なめフレッシュ感のある、時短ジャムです。
材料(約200ml分)
- ミックスベリー(ブルーベリー、ラズベリー、ストロベリーなど):200g
- お好みの砂糖:50~80g
- レモン汁:大さじ2
作り方
- 冷蔵庫でもしくはレンジで解凍し、砂糖とレモン汁と一緒に大きめの耐熱ボールなどに入れて15分ほど置きます(解凍することで水分も出ます)。
- ラップをせずに、500Wのレンジで3分加熱、取り出してアクを取ります。さらに3分加熱し取り出して混ぜ、とろみ加減や味見をしてOKなら完成です(お好みで砂糖やレモン汁を追加した場合は、2分ほど加熱します)。
コンポートの基本と作り方
コンポートの基本
シロップは「濃厚な糖液の総称」です。
コンポートは、薄いシロップで煮てフルーツの食感や風味を引き立てて楽しむものとして、砂糖類の分量は概ね10~30%程度で、フルーツの種類やお好みで加減することが可能です。
基本のシロップと作り方
材料
- 水:300ml
- 砂糖:80~100g
- レモン汁もしくはバニラビーンズなど:適量
作り方
- 鍋に砂糖と水を入れて火にかけしっかり溶かしてシロップを先に作ります。
- フルーツを加えてやわらかくなりすぎないよう注意しながら弱火で煮て完成です。
保存方法と期間
密閉容器にシロップごと入れて冷蔵庫で保存し、4~5日を目安に食べきるようにしましょう。日持ちは短いため、小分けに作るのがコツです。
冷凍保存も可能ですが、食感がやや変化する場合があります。
りんごのコンポートの作り方
皮つきのまま作ると、ほんのり色づいてステキです。
シナモンは、スティックであればシロップづくりの時から加えて加熱、パウダーの場合は食べる時に振りかけるのもおすすめです。
材料
- りんご:1個
- 水:200ml
- 砂糖:50g
- レモン汁:小さじ1
- シナモン:お好みで
作り方
- 鍋で先にシロップを作ります。
- りんごはよく洗い皮つきのまま8等分にして鍋に入れます。
- クッキングシートなどで落し蓋をしてりんごに透明感が出るまで煮て、そのまま冷まし完成です。
いちじくの紅茶シロップコンポート
いちじくはシロップで煮ると淡いピンク色が美しいですよね。その色はありませんが、紅茶をベースにしても相性よくいただけます。個性のたち過ぎない紅茶であれば、他には柑橘類や洋梨とも合います。
材料
- いちじく:4個
- 紅茶:300ml(ティーバッグ1~2個もしくは茶葉4g程度)
- 砂糖:40g
- レモン汁:大さじ1
作り方
- 先に紅茶を入れ、さらにシロップを作ります。
- いちじくは熱湯に入れたあと冷水にとって皮をむき鍋に入れ、落し蓋をして紅茶ベースのシロップで煮て火を通します。
- 最後にレモン汁を入れ鍋のまま冷やし完成です。
アレンジアイデアつれづれ
・添えるだけのせるだけ
例えば、ジャムもコンポートも、アイスクリームやパンケーキ、チーズケーキ、プリンなどに添えるだけで手軽におしゃれなデザートに変身します。
またヨーグルトやグラノーラ、かき氷にのせる際、ジャムとコンポートの両方を使うと、見た目も華やぎ味に奥行きも出て満足感がアップします。
・さまざまな料理にも使える
サラダ・ソース・マリネ・煮込み・グリルに、相性の良いフルーツのジャムやコンポートと野菜・肉・魚・パスタ・穀類・チーズなどを合わせて調理に使用することで、添え物以外に料理にも使えます。
例えば、チーズ、キヌア、ナッツ類にカットしたりんごなどのコンポートを加えオリーブオイルと塩をかけた軽食や、ハーブやスパイスとベリーや柑橘系のジャムなどを加えてスペアリブを煮るか焼くなど、加熱済みで味の完成したフルーツを用いることで、普段の料理に少しだけ変化をもたらしてくれます。
・シロップの使い道
コンポートでできたシロップは、炭酸水で割ってドリンクにしたり、刻んだ果肉とともにゼリーやシャーベットの材料などにして楽しむことができます。
また、フルーツコンポートの風味や甘味を活かして、紅茶やハーブティーと合わせればより豊かなティータイムになります。
・冷凍フルーツの利用
先の章でご紹介しましたレシピのように、冷凍フルーツを使えば、季節を問わずジャムやコンポートが簡単により作れます。
あらかじめカットされた商品であれば手間も省け、必要な分量ずつ作れて便利ですよ。
・ドライフルーツを使ってコンポート風
ドライフルーツを軽く戻してからコンポート風に煮れば、砂糖を使わずとも、自然な甘みと凝縮した味わいを手軽に楽しめます。
・複数のフルーツを組み合わせる
何も一種類のフルーツで作るという決まりはありません。市販にもミックスフルーツのジャムはあります。色味・香りや酸味と甘味のバランスなどを考慮して、色々組み合わせてみるのもアリですよ。
例えば、コンポートであれば柑橘系とベリー類を組み合わせると、見た目にも鮮やかでバランスも取れた爽やかな味わいに仕上がります。
完熟前の硬めのメロンだった時にぶどうやサクランボなども、カラフルでおいしくいただけます。
桃にりんごをあわせたジャムは、色味も近くおだやかでプリザーブタイプにすれば食感の違いも楽しめます。
まとめ
ジャムやコンポート、コンフィチュールにはそれぞれの魅力と使い方があります。
旬のフルーツを活かしながら、自宅で手軽に作れるこれらの保存食は、食卓を彩り、毎日の食事にちょっとした特別感を加えてくれるものです。
好みや目的に合わせて使い分け、フルーツの楽しみ方をさらに広げていきましょう。
※以下に違いをまとめてみました。
ジャム | コンポート | コンフィチュール | |
特徴 | フルーツを砂糖で煮詰めてゼリー状のとろみをつける | フルーツを砂糖水(シロップ)で煮て形や風味を残す | フルーツの形や風味を活かしつつ砂糖類でゆるめに煮込む |
仕上がり | 煮崩れて滑らか〜やや果肉 | 果実感たっぷり(丸ごと・カット) | 果肉+とろみ |
砂糖の量 | 多め(40〜60%程度) | 少なめ(概ね10〜30%程度) | 中間(25〜50%前後) |
保存性 | 高い | 低い(要冷蔵) | 中程度 |