天ぷらを揚げていると、「衣がはがれて見た目や食感が……」ということは、多くの方が経験する悩みではないでしょうか。特になすは水分が多く皮目がツルッとしていて、衣が剥がれやすい野菜のひとつです。
とはいえ、いくつかのポイントを押さえることで、衣がしっかりと密着し、カラッと揚がったおいしい天ぷらを作ることができます。
下ごしらえのコツから衣作り、揚げ方、保存方法まで、具体的で簡単に実践できる工夫をにご紹介しておりますので、どうぞ参考になさってくださいね。
なすの天ぷら衣が剥がれる原因と対策
以下の内容は、他の野菜や食材にも適用されることといえます。
衣が剥がれる原因は?
なすの天ぷらで衣がはがれてしまう原因はいくつかありますが、主に以下の内容といえます。
- なすの表面に水分が残っている
なすは水分を多く含む野菜であり、表面に水分が残っていると、揚げた際に蒸発して衣が浮き上がり、剥がれてしまいます - 衣がうまく絡んでいない
衣がなすにしっかりと密着していないと、揚げている途中で剥がれやすくなります - 衣の粘度が適切ではない
衣がゆるすぎたり、逆に濃すぎたりすると、なすにうまく絡まず、剥がれの原因となります - 揚げ油の温度が合っていない
油の温度が低すぎると衣がベタつきやすく、高すぎると焦げやすくなります。適切な温度管理が必要です
特になすは水分を多く含む野菜なので、直に衣だけをつけると、油の中で水分が蒸発し、衣が浮き上がってはがれてしまうのです。
うまくいく下ごしらえ
美しい仕上がりのためには、下ごしらえがとても大切です。
水分をしっかり取る
なすを切った後は、キッチンペーパーでしっかりと表面の水分を拭き取りましょう。
水につけてアクを抜く場合も、長時間浸けすぎないこと、しっかり水を切ることが大切です。特になすの内部の水分が多いので、切ってからしばらく置くことで少し水分を抜いておくのも有効です。
打ち粉をはたいて仕上がりよく
水分をしっかり取ったあとは、小麦粉や片栗粉を薄くまぶして打ち粉をしましょう。これにより衣が食材にしっかりと密着し、揚げたときに剥がれにくくなります。
小麦粉を打ち粉として使用すると、衣とのなじみが良く、全体が一体化したような仕上がりになります。素材の風味を活かしつつ、衣が自然にまといやすくなるため、初心者にも扱いやすい方法です。
一方、片栗粉は表面にサラッとつき、衣が軽やかでサクサクとした食感に仕上がりやすくなります。どちらの粉を使うかは、食感の好みによって選ぶとよいでしょう。
いずれを使う場合でも、粉はごく薄くまぶす程度にとどめ、余分な粉は手や刷毛で軽くはたいて落とすのがポイントです。粉が厚く残りすぎると、衣の中で水分がこもり、ベチャっとした食感になったり、逆に衣が剥がれる原因にもなります。
なすのように水分を含みやすい野菜は、特に打ち粉のひと手間で衣の付きやすさが格段に変わります。薄く均一にまぶしておくことで、見た目も味も美しく仕上がるのです。
なすの切り方や切れ込み
なすの切り方を工夫することも、衣の密着や揚げあがりの美しさに大きく影響します。
基本的には輪切り、または縦半分にカットする方法が一般的ですが、さらに切れ込みを入れることで、見た目や食感にもよい効果があります。
輪切りや縦薄切りの場合はそのままでもよく、縦半分の皮目には軽く格子の切れ込みを入れると、衣が剥がれにくくなり、火の通りも均一になります。
縦半分の場合は、そのあとさらに扇形に広がるよう切れ込みをいれるのもおすすめです。なすの上の部分を1〜2cmほど残し、下部に数本の縦の切れ込みを入れておくと、揚げた際に末広がりになり見た目も美しく衣が剥がれにくくなります。また、なすは熱が入りやすく火の通りが早いため、均一に加熱されムラなく仕上げることもできます。
切り方や切れ込みなど、おもてなしやお弁当など用途やお好みに合わせて変えてみると、バリエーションも楽しめますよ。
カラッと揚げるための衣の作り方
天ぷら粉と小麦粉の使い方
天ぷらの衣を作る際、基本となるのは「小麦粉(薄力粉)」と「天ぷら粉」のどちらかではないでしょうか。
市販の天ぷら粉には、ベーキングパウダーや粉卵などが配合されているため、袋に記載された分量通りに水で溶くだけで、手軽にカラッと揚げられるのが特徴です。
自分で作る場合は、冷水1カップに対して薄力粉1カップ、卵1/2個が基本的な配合です。全卵を溶いて半量用いるとよいでしょう。また、卵なしでも衣になります。
いづれの場合も、粉は必ずふるい、冷水でさっと混ぜるのがポイントです。
また、衣をつける前に「打ち粉」をすることで、衣の付きがよくなり、揚げたときに衣がはがれにくくなりますので、小麦粉などはその分も別途用意しましょう。
片栗粉を使った衣の工夫
衣に少量の片栗粉を混ぜることで、サクッとした食感が加わり冷めても衣がへたりにくくなるという利点があります。
特になすのように水分の多い食材には、片栗粉を加えることで衣に水分がにじみにくく密着度も高まるため、剝がれにくさにもつながります。
配合としては、お好みにより薄力粉:片栗粉を7:3~5:5の割合で混ぜるのが一般的で、揚げたときにやや厚めでしっかりした衣になります。なすの天ぷらなどしっかりコーティングしたい場合や、食感をより強調したい場合に適しています。薄衣を好む場合は、打ち粉にも片栗粉を使用するとよいでしょう。
さらに、片栗粉を衣に加えることで食材の水分が出にくく、揚げ油に入れたときの「油はね」が軽減される傾向にあります。
冷水を用いる理由と効果
冷水や氷水を使うことで薄力粉のグルテン発生を抑え、衣がサクッと軽く仕上がります。調理直前まで冷蔵庫に冷やしておくほか、炭酸水を用いてすぐ使用するのもよいでしょう。
ダマにならない衣の作り方
衣を混ぜすぎるとグルテンが出て粘り気が強くなり、揚げたときに重たい印象になります。ふるいにかけた後は、粉っぽさが残っていてもOKなので、さっくりと混ぜるのがコツです。
マヨネーズを使って
意外かもしれませんが、衣に少量のマヨネーズを加えると、サクッと揚がりやすくなります。
マヨネーズに含まれる油分や酢・卵黄が衣のなじみをよくし剥がれにくくなる効果もある上、揚げ油ともなじみ軽い仕上がりになります。
天ぷら衣1/2カップに対して大さじ1〜2程度が目安です。
マヨネーズに冷水を少しずつ加えたあと、薄力粉をさっくりと混ぜましょう。特に卵黄成分のおかげで、軽やかさの中にも衣のコクにより、シンプルな野菜の天ぷらが風味豊かに仕上がります。
特になすの天ぷらにマヨネーズ入りの衣を使うと、衣の付きがよくなるうえ、加熱することでなすのジューシーさを包み込むような食感になります。
マヨネーズ入りの衣は冷めてもおいしさが保たれやすく、お弁当や作り置きにも適しています。ただし、マヨネーズの風味が苦手な方やアレルギーがある場合には無理に使わず、片栗粉など他の工夫で代用するのが無難です。
天ぷらの揚げ方と温度・保存方法
最適な揚げ温度や揚げ方は?
天ぷらをカラッと揚げるには、揚げ油の温度管理が重要で、低すぎると衣がベタつきやすく、高すぎると焦げやすくなります。
なすの場合は170〜180℃が目安です。
揚げ時間の目安とチェックポイント
衣がきつね色になり、表面に気泡が少なくなり音が小さくなってきたら引き上げ時です。
なすは比較的火の通りが早いので、1分半〜2分ほどが適正な揚げ時間です。
その他の衣が剝がれやすい野菜や食材の油温や二度揚げ
天ぷらは、食材ごとに最適な揚げ方が異なります。以下に衣が剥がれやすい代表的な野菜や魚介類について、油温や揚げ方などポイントをまとめました。
根菜類(さつまいも・かぼちゃなど)
根菜類は中までしっかり火を通す必要があるため、二度揚げがおすすめです。
- 1回目:180℃で1〜2分ほど揚げる
- 油を切って数分おき、余熱で火を通す
- 2回目:160℃で2〜3分じっくり揚げる
こうすることで、外はカリッと、中はホクホクに仕上がります。
葉物野菜(春菊・大葉など)
葉が薄く、水分が少ないため、高温で短時間がポイントです。
- 温度:190〜200℃
- 時間:10〜15秒程度
打ち粉をして片面だけに薄く衣をつけて揚げると、パリッと軽やかな食感になります。
えび
- 温度:170〜180℃
- 時間:2分前後(サイズにより調整)
えびは背ワタを取り、まっすぐ伸ばしてから打ち粉、衣を薄めにつけて揚げ油にそっと入れるのがポイントです。
イカ
- 温度:180℃
- 時間:1〜1.5分程度
揚げすぎると硬くなりやすいため、短時間でさっと仕上げます。
玉ねぎ
- 温度:170〜180℃
- 時間:1.5〜2分程度
薄くスライスした玉ねぎは、加熱しすぎると焦げやすいため、衣で全体を包みこむようにして揚げると均一に火が通ります。
ピーマン
- 温度:170℃前後
- 時間:30〜40秒程度
半分に切って種を取り、片栗粉の打ち粉のあと衣をつけて短時間でさっと揚げます。水分が多いため、油はねに注意しましょう。
実践!なすのサクッと天ぷら簡単レシピ
衣に、薄力粉:片栗粉2:1、マヨネーズを用いた簡単版です。
材料(2人分)
- なす:2本
- 薄力粉(打ち粉用):適量
- 衣:薄力粉1/2カップ、片栗粉1/4カップ、冷水1/2カップ、マヨネーズ大さじ1
- 揚げ油:適量
手順
- なすはヘタを取り、縦半分にカットし下部が広がるよう7ミリ幅に切れ込みを入れる
- 水にさらしてアクを抜いた後、キッチンペーパーで水気をふき取る
- 全体に打ち粉を薄くはたく
- マヨネーズに冷水を加えて溶かし、薄力粉をさっくり混ぜ衣を作りくぐらせる
- 170℃の油で1分半〜2分揚げる
- 衣がきつね色になったら油を切って完成
揚げた後の冷蔵保存と再加熱のコツ
揚げた天ぷらは冷蔵保存する場合、保存容器にキッチンペーパーを敷きその上に並べて入れましょう。量が多く重ねる場合は、間にもキッチンペーパーをはさんで油分を吸収させておくとよいでしょう。
再加熱は、オーブントースターで3〜5分ほどでサクッと感が復活します。電子レンジはしっとりしやすいので注意が必要です。
まとめ
なすなどの天ぷらで衣が剥がれてしまうのは、水分や衣のつけ方、油温に原因があることがほとんどです。ご紹介した下ごしらえでの切り方や打ち粉のひと手間、衣作りの工夫、揚げ方のポイントを押さえることで、簡単にカラッと揚がった美しい天ぷらを作ることができます。
特になすのように水分が多く皮目がツルッとしている食材は、扱いが難しいと感じられますが、コツを知っていれば失敗しにくくなります。
ご家庭で気軽に試して、お好みの仕上がりを楽しんでみてくださいね。