ピクルスといえば、彩り豊かで作り置きにも便利な常備菜ですが、どんな野菜でもうまく仕上がるかといえば、実は、そうはいかない場合もあります。そんな経験ありませんか?
そこで、この機会においしいピクルス作りのため、向く・向かない野菜とその特徴、下茹での要・不要、基本の作り方と試してみたい食材や漬け汁の活用法など、具体的にご案内いたします。
基本をおさえ、これからピクルス作りに挑戦したい方や、レパートリーを増やしたい方にご覧いただきたい内容になっております。
ピクルス作りに向く野菜・向かない野菜
向く野菜の特徴と15選
ピクルスに適した野菜には、歯ごたえや味のしみ込みやすさなど、共通する特徴があります。
食感がしっかりしており、漬けても崩れにくいもの、酢による退色の影響が少なく、下茹でや湯通しや漬け込みにより、色鮮やかに仕上がり、味のなじみも良くなるものです。
以下に定番や適した野菜を15選ご紹介します。
- きゅうり:シャキッとした食感とさっぱりとした味わいが特徴で、ピクルスの定番
- にんじん:コリコリとした食感が魅力、薄切りやスティック状で色合いも鮮やか
- 大根:さっぱりとした味わいで、和風ピクルスはじめアレンジにも向く万能素材
- かぶ:柔らかく、ほんのりとした甘みが特徴
- セロリ:独特の香りと食感がアクセント、ピクルス液とも好相性
- カリフラワー:花蕾からいの部分がピクルス液をよく吸い、見た目も華やか
- ラディッシュ:赤い色素が酢に溶け出し、可愛らしいピンク色に
- パプリカ(赤・黄):甘みがありやわらかくなりすぎず、彩り豊かに
- ミニトマト:皮を湯むきして漬けると味が染み込みやすい、皮つき半分カットでもOK
- ごぼう:薄くスライスし下茹でして漬ければ香り高く、和風の味付けにも合う
- れんこん:薄くスライスし下茹でして漬ける、シャキッとした食感と見た目も美しく
- ズッキーニ:加熱なしでも食べやすく、マイルドな味わい
- 玉ねぎ:甘酸っぱさが引き立ち、サラダにも合う
- キャベツ:塩もみ後に漬けることで、ザワークラウトとは異なる味わいに
- キノコ類:サッと湯通しして漬け込めば食感が残り、うま味も凝縮した時短の一品に
向かない野菜の特徴と12選
一方で、ピクルスに不向きな野菜もあります。苦味・えぐみの出やすさ、酸による色素変化や水分の多さ、崩れやすさやさ、風味や食感の面での相性など注意が必要になります。
例えば、葉物野菜などが挙げられ、和えるだけならおいしい場合も、ピクルス液に浸けこむのは避けた方が無難です。
- レタス・白菜・チンゲン菜・水菜:水分が多く、漬けると食感もクタクタに
- ほうれん草・小松菜:苦味が出やすく、食感も損なわれがち
- モヤシ:水分が多すぎて日持ちせず漬け込むには不向き
- ナス:色落ちしやすく見た目が気になる、ピクルスとして漬け込むには不向き
- モロヘイヤ:粘り気があり、ピクルスには不向き
- 春菊:独特の香りがピクルス液と合いづらい
- シソ:香りが強すぎて、他の野菜の風味に勝ってしまう
- アボカド:変色しやすく、食感も悪くなる
人気の野菜や意外なものは?
人気の野菜としては、キュウリ・ミニトマト・カラフルなパプリカ・うずらの卵などが挙げられます。
また、定番の野菜以外にも、意外な食材が合うものがあります。例えば、
- ミョウガ・ショウガ:ほんのり色づき、甘酢とは異なるさっぱりアレンジに
- 摘果スイカ・かぼちゃ・ブロッコリー茎部分:薄切り湯通しすれば、シャキッとした歯ざわり
- 芽キャベツ:さっと茹でてから漬けるとほのかな苦味がアクセントに
- ケール:軽く塩もみ後サッと短時間つけると苦みも和らぎ青菜のような風味で食べやすく、他のサラダに合わせてトッピングに
- オクラ:カットせず塩で板摺り後サッと湯通しで色止めとぬめりも防ぐ、和風なら食べやすく
- そら豆:2分ほど茹でるか、さやごとグリルで10~15分焼いて漬け込む、塩ゆでとは異なる風味に
- 紅芯大根・紫人参・ビーツ・紫玉ねぎ・紫キャベツなどカラフル野菜:短時間の漬け込みで色素が出て目先も変わり、彩りある常備菜に
- ジャガイモ・サツマイモ:食感を残し軽く茹でた後で漬け込みサッパリと
茹でる・茹でない野菜の扱い
なぜ下茹でや湯通しが必要?茹で時間の目安
野菜の種類によっては、下茹でや湯通しを行うことで、以下のような効果があります。
- 色鮮やかに仕上がる:加熱することで、野菜の色が鮮やかになる
- 食感が柔らかくなる:硬い野菜も、適度な柔らかさになる
- 苦味やえぐみが和らぐ:特に根菜類は、下茹ですることで苦味が軽減
- ピクルス液がなじみやすくなる:加熱により、野菜の細胞壁が壊れ、味が染み込みやすくなる
湯通しと下茹での違い
- 湯通しとは:熱湯をさっとかけるか、ごく短時間だけ熱湯にくぐらせること。食感を残しつつ表面に火を通し汚れや臭み・油分・ぬめりを取り除く
- 下茹でとは:芯まで加熱するため数分間熱湯で茹でる処理。アク抜きや野菜の色を鮮やかに、味をなじみやすくする
茹で時間の目安:
茹で時間の目安としては、にんじんや大根は20秒程度、レンコン・カリフラワーは1〜2分、ごぼうは2〜3分程度とされています。
薄切りの場合で、あくまで目安につき、茹で過ぎると食感が損なわれるため、お好みの固さを確認し調整していきましょう。
また、れんこんや大根など根菜類や固めの野菜は水から、葉物やその他は熱湯から、茹でるとよいでしょう。
茹でない方がよい野菜は?
キュウリやセロリ・パプリカなどの水分が多く柔らかい野菜は、加熱により食感が失われやすいため、茹でずに生のまま漬ける方が、シャキッとした食感を楽しめます。
また、ミニトマトは、湯むきしてから漬けると、食べる時に皮が邪魔にならず、味のなじみも良くなります。
ピクルスの作り方
そもそもピクルスとは
ピクルスとは、野菜や果物を酢や塩、砂糖、香辛料などの調味液に漬け込んだ保存食の一種です。
ピクルスには発酵させる方法と、発酵させない方法があり、古くは保存を目的として野菜を「塩水に漬けて発酵させたもの(乳酸発酵)」が起源とされますが、塩漬け後さらに酢漬けにしたものや現代では酢に漬けて発酵を伴わない「酢漬けタイプ」が主流となっているようです。
発酵させる塩漬けと発酵なしの酢漬け
- 発酵ピクルス:野菜を塩水や香辛料に数日間漬けて自然に乳酸発酵させる。酸味や独特の風味が生まれ保存性が高い、ザワークラウトなどが有名
- 非発酵ピクルス:野菜を(下茹でし)酢や塩・砂糖・ハーブ類などの調味料を混ぜた液に漬けるだけ。短時間で作って食べられるのが魅力
マリネとの違いは
ピクルスと似た料理にマリネがありますが、マリネは主にオイルやビネガーで素材に味をしみ込ませる調理法で、保存目的ではない点が異なります。そのため保存性はピクルスほど高くありません。
酢玉ねぎや酢キャベツも
また、酢玉ねぎや酢キャベツも、酢を使った保存食として人気があります。
砂糖や湯通しの有無など作り方もさまざまあり、親しまれています。
漬け物は
一方、日本の漬物は塩・ぬか・味噌・しょうゆなど多様な素材で作られ、発酵をともなうものも多く、風味が深いのが特徴で、古来の発酵ピクルスに通じるものがあります。
近年主流のピクルスは発酵を目的とせず、短期間で作る洋風の保存食であり、これら和の漬け物とは異なるジャンルといえるでしょう。
基本の作り方とポイント
野菜を決めたら、漬け汁を用意して漬け込むだけです。最近は保存袋を使用することで少量から手軽に作ることができて漬かりやすく便利ですね。
- 野菜を適度な大きさに切る
- 必要に応じて下茹でや湯通しを行う
- 漬け汁を煮立たせて冷ます
- 密閉保存袋や容器・瓶に野菜と漬け汁を上部いっぱいまで入れる
- 冷蔵庫で一晩以上置く
ポイントは、煮沸消毒した容器や瓶(ガラスやホーロー製が望ましい)、もしくは清潔な密閉保存袋を使い、出来る限り空気に触れないように漬け汁で満たして作ることです。袋の場合は容器や瓶に移し替えて保存します。
定番キュウリの簡単ピクルス
材料(キュウリ2本分)
- キュウリ:2本
- 酢:100ml
- 水:100ml
- 砂糖:大さじ2
- 塩:小さじ1
- ローリエ・黒胡椒・にんにく・赤唐辛子など(お好みで)
作り方:
- きゅうり2本を食べやすい大きさにカットする
- 鍋にピクルス液の材料を入れ、中火で砂糖が溶けるまで加熱し、冷ます
- 保存袋に野菜とピクルス液を入れ、軽くもみ込むようにして全体になじませる
- 袋の空気を抜いて口を閉じ、冷蔵庫で半日〜1日ほど漬け込む
- 味がなじんだら完成、保存する場合は清潔な容器や瓶に移し替える
色々な酢を用いることが可能
ピクルス作りに使える酢は、穀物酢や米酢だけではありません。
フルーティーな風味の果実酢や、深みのある黒酢など、バリエーション豊かな酢を使うことで、仕上がりの味わいがぐっと変わります。用途や好みに合わせて、酢の種類を使い分けるのも自家製ピクルスの楽しみのひとつになります。
リンゴ酢を用いたまろやかなピクルス
リンゴ酢はフルーティーでまろやかな酸味が特徴で、野菜の風味を引き立て、子どもにも食べやすいピクルスに仕上がります。
特ににんじんや玉ねぎ・パプリカなど甘みのある野菜との組み合わせは相性が良く、彩りも美しくなります。
黒酢で作る独特の風味
米酢はクセが少なく、やさしい味に仕上がるため、どんな野菜にも使いやすい万能タイプといえます。
一方、黒酢はコクとやや個性的な風味があり、ピクルスに深みを与えるため、ごぼうやれんこんなどの根菜やキノコ類といった和の食材と相性がよいようです。
市販の調合酢なら
市販の調合酢を使えば、砂糖や塩などを量って配合する手間が省け、手軽に本格的な味わいが楽しめます。
あらかじめ味が調整されているため、改めて加熱することもなく、漬けるだけでおいしく仕上がるのが魅力で、初心者の方や時間がないときにおすすめの方法です。
ピクルスに合うスパイスと調味料
ピクルスの味の決め手になるのがスパイスや調味料の使い方で、香りをプラスし奥行きのある味に仕上がります。代表的なものには、以下のようなものがあります。
- ローリエ:独特の香りで風味を豊かに
- 黒胡椒(ホール):ピリッと味の引き締め役
- ディルシード:清涼感のある香りがピクルスにぴったり
- 唐辛子:ほんの少し加えるだけで、刺激的なアクセントに
- マスタードシード:プチプチとした食感と香ばしさを加える
- にんにく:うま味や風味が加わる
- ローズマリー・タイムなどハーブ類:爽やかな香りづけに
- カレー粉:色づけ・スパイシーに
- 醤油:和風味や隠し味に
これらを好みに応じて加えることで、自分だけの風味を演出できます。
自家製ピクルス液の味付けのコツ
基本のピクルス液は「酢:水=1:1」+「砂糖+塩」+「スパイスなど」で作られますが、甘さや塩気は野菜や好みによって調整が可能です。
砂糖を多めや塩を多めなど、味見しながら自分好みに調整するのがコツです。
基本比率の一例
- 酢:100ml
- 水:100ml
- 砂糖:大さじ2
- 塩:小さじ1
スパイスやハーブを加えて、風味を調えるとより本格的に仕上がります。
漬け込み時間の目安は?
ピクルスは、漬ける時間によって味の染み具合や食感が変わってきます。
食べるタイミングに合わせて調整すると良いでしょう。
- 早く食べる浅漬け(3時間〜半日):素材の食感や風味を生かしたフレッシュな味わい
- 一般的な漬け加減(1〜2日):味がなじみ、バランスのよい風味に
- 本漬け(3日~1週間以上):しっかりと味が染み込み、加熱殺菌すれば保存にも
食感と風味を活かした作り方
ピクルスは食感や色味が魅力が大きな魅力ではないでしょうか。短冊切りや薄切りといった切り方や、野菜によっては下茹でや塩もみをすることで、程よい食感を保つことができます。
たとえば、カリフラワーやれんこんはさっと下茹ですると歯ごたえが残り、キャベツやパプリカは塩もみしてから漬けると水分が抜けて味が染み込みやすくなります。
また、漬けるときは完全に冷めた漬け汁を使い冷蔵庫保存することで、野菜の鮮やかな色合いや風味・食感が保てます。
アレンジレシピ:大根やカリフラワーのカレー風味ピクルス
野菜を一口大に切って下茹でし、調味料を煮立てて冷ました液に漬け込むだけです。カレー風味のスパイシーさで食欲をそそる一品、、作り置きにもおすすめです。
材料例(2人分)
- 大根:100g
- カリフラワー:100g
- 酢:100ml
- 水:100ml
- 砂糖:大さじ2
- 塩:小さじ1
- カレー粉:小さじ1/2
- ターメリック(あれば):少々
- 黒胡椒(ホール):少々
作り方
- 大根は厚めのいちょう切り、カリフラワーは小房に分けて1分ほど茹でる
- 小鍋に酢・水・砂糖・塩・カレー粉・ターメリック・黒胡椒を入れ、ひと煮立ちさせて完全に冷ます
- 野菜を保存容器や袋に入れ、冷めた漬け汁を注ぎ、冷蔵庫で一晩漬けて完成
和風ピクルスにだしと醤油
和風ピクルスにだしを使用した和風ピクルスは、だしの豊かな風味が野菜の甘みや酸味とバランスよく調和し旨味が増して深みのある味わいになります。さらに、醤油を加えることでコクと塩気が加わり、和風の美味しいピクルスが完成します。
だしと醤油のピクルス液
材料:
- だし(昆布やかつお節などを使ったもの):100ml
- 米酢:100ml
- 醤油(薄口醤油):小さじ1/2
- みりん:大さじ1
- 塩:少々
- 砂糖:少々
- 唐辛子(お好みで)
作り方:
- だしをとり、温かいだしに醤油やみりんを加えて温める
- 砂糖や塩で調整し、酢を加えて冷ます
- 野菜を切り、漬け込む袋や容器に入れて、ピクルス液を注ぎ、冷蔵庫で数時間~一晩漬け込む
具材の野菜には、大根、キュウリ、オクラ、しいたけやエリンギなどキノコ類などが合いますよ。
自家製ピクルスの保存と漬け汁活用法
冷蔵と常温・保存期間の目安と管理方法
保存期間の目安
- 冷蔵保存:1週間〜10日
- 加熱殺菌した瓶詰め:1か月程度
一般的に、酢を使用した非発酵ピクルスは冷蔵保存が適しています。ガラスやホーロー製などの密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存することで、使用する材料によって異なりますが、約1週間から10日程度の保存が可能です。
一方で、塩と水乳酸発酵させた発酵ピクルスは、適切な発酵環境を保つことで常温保存も可能ですが、煮沸消毒済みの清潔な容器であることと発酵が進みすぎないよう注意が必要です。発酵が進むことで風味が変化するため、好みの酸味や風味になった時点で冷蔵庫に移し、発酵を緩やかにすることで、最後までおいしく食べられます。
保存中や取り出しには、清潔なスプーンや箸などの器具を使用し、空気や水気に触れさせないよう野菜が漬け汁に完全に浸かっている状態を保つことが大切なポイントです。
残った漬け汁の活用法
ピクルスを食べ終えた後の漬け汁は、捨てずにさまざまな料理に活用できます。酢やスパイスの風味が染み出した漬け汁は、調味料として再利用することで、料理の幅が広がります。
ただし、漬け汁には生の野菜から出た水分も含まれますので、再度ピクルス作りの漬け汁にしたり継ぎ足しに用いるのは、避けるようにしましょう。
ドレッシング・浸し液・ドリンクにも
- ドレッシング:漬け汁にオリーブオイルやマスタードを加えて混ぜると、風味豊かなドレッシングに
- 浸し液:揚げたり茹でた野菜を漬け汁に浸すことで、簡単なマリネ風の一品に
- ドリンク:炭酸水で割ると、爽やかなピクルス風味のドリンクにも
酢炊き(ご飯・魚・肉など)
漬け汁の酸味と旨味を活かした「酢炊き」は、料理に酸味とコクを加える調理法です。
魚や肉を漬け汁で煮込むことで、青魚や鶏手羽肉などの脂質と合いさっぱりとした味わいの煮物が完成します。
また、ご飯を炊く際に漬け汁を加えると、ほんのりとした酸味が特徴の酢飯として、ちらしずしのベースになります。
酢炊き飯の簡単な作り方(2人分)
材料(2合分):
- 米:2合
- 水:通常の水加減から大さじ2を減らす
- ピクルスの漬け汁:大さじ2
- 塩:少々(漬け汁の塩分に応じて調整)
- 昆布:10~15cm大1枚
作り方:
- 米を洗い、炊飯器に入れる
- 通常の水加減から大さじ2を減らし、代わりに漬け汁と昆布を加える
- 塩で味を調整し、通常通り炊飯する
また、油揚げやにんじん、しめじなどを加えて炊くだけでピクルス液の風味でさっぱりした炊き込みご飯にもなります。
まとめ
ピクルス作りは、素材選びと下処理の有無、好みの調合の漬け汁がポイントです。
向く野菜と向かない野菜の特徴を知り、茹でるべきかどうかを見極めることで、彩りや食感のよい新たな食材を試しながら、さらにおいしいピクルスが完成することでしょう。
残った漬け汁も活用して無駄なく豊かな食卓へ、アレンジも楽しんでみてはいかがでしょうか。